症状コラム

成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)と成長ホルモン補充療法

当院では、成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)を含む下垂体前葉機能低下症の診療に力を入れており、年間1200名前後(延べ)の患者さんに成長ホルモン補充療法(GHRT)を提供しています。
ここでは、AGHDの基礎知識・診断・治療・当院の治療方針について分かりやすく解説します。

1. 成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)とは

成人期において成長ホルモン(GH)が不足する状態で、厚生労働省の指定難病の1つです。

● 成長ホルモンの役割(成人)

成人でも以下の重要な作用があります:

  • 筋肉・骨の維持
  • 脂肪代謝の調整
  • 心血管の健康
  • エネルギー代謝
  • QOL(生活の質)

● 不足した場合にみられやすい症状

  • 疲れやすい
  • 筋力低下
  • 中心性肥満(内臓脂肪の増加)
  • 脂質異常症
  • 骨密度低下
  • 気分の低下・活力低下
  • 運動耐容能の低下

● 主な原因

  • 下垂体腺腫(手術後・放射線後など)
  • 視床下部障害
  • 頭部外傷
  • 特発性(原因不明の場合あり)

2. 診断方法(ガイドラインに基づいて行います)

● ① 血清IGF-1の測定

年齢・性別を考慮して解釈します。

● ② 負荷試験

以下のうち、適切なものを選択します:

  • GHRP-2負荷試験
  • グルカゴン負荷試験
  • アルギニン負荷試験

国際的な診断基準(Endocrine Society, JACEなど)に沿って総合的に判定します。

● ③ 必要に応じて画像検査(MRI)

下垂体の状態を確認します。


3. 成長ホルモン補充療法(GHRT)の効果

多くのエビデンスが蓄積されていますが、効果の現れ方には個人差があります。

● 期待される改善

  • 体脂肪の減少・筋肉量の改善
  • 脂質代謝の改善(中性脂肪、LDL低下傾向)
  • 骨代謝の改善(1〜2年で骨密度改善がみられることがある)
  • 運動耐容能の向上
  • 活力・QOLの改善

● 注意が必要な点(副作用)

  • 浮腫
  • 関節痛
  • 手のしびれ
  • 血糖上昇(糖尿病のある方では慎重な調整が必要)

副作用は用量調整と経過観察で多くが改善します。


4. 当院の治療方針

  • 国際ガイドラインおよび厚生労働省基準に沿った診断
  • IGF-1目標値に応じた適切な投与量の設定
  • 初回は低用量からスタートし、安全性を確認
  • 1〜2か月ごとの定期フォロー(採血・症状評価)
  • 骨密度や脂質異常など、AGHDに付随する問題も総合的に管理
  • 生活背景に合わせたオンライン診療の活用

5. 継続治療を支えるために

成長ホルモン補充療法は継続してこそ効果が安定します。
当院では以下の点を重視しています:

  • 明確な数値目標(IGF-1・脂質・骨代謝など)
  • 副作用への早期対応
  • 患者さんの生活に合わせた診療間隔とオンライン診療
  • 医学的意義を丁寧に説明し、不安を解消しながら進める治療

6. 主な参考ガイドライン(一般向けに要点のみ紹介)

  • Endocrine Society Clinical Practice Guideline(2011)
  • GH Research Society(2007)
  • 国際的RCT・長期観察研究(骨密度および身体組成改善の報告多数)
  • Somapacitan(週1回製剤)に関する国際的コンセンサスステートメント(2022)

※詳細な論文名・外部リンクは医療広告規制の観点から省略しています。必要な方は診察時にお申し出ください。


7. 当院が選ばれる理由

  • 下垂体前葉機能低下症の患者さんを年間1400例程度診療(2024–2025)
  • 成人GH補充療法を多数管理してきた経験
  • 患者さんの生活背景に応じた柔軟な治療調整
  • 遠方の方でも続けやすいオンライン診療
  • 脳神経外科 × 内分泌の専門性を持つクリニックならではの一貫した管理

🌟 ご相談ください

以下の症状がある方は、AGHDの可能性があります:

  • 疲れやすい・活力が出ない
  • 内臓脂肪が増えてきた
  • 中性脂肪・LDLがなかなか下がらない
  • 骨密度が低下していると言われた
  • 他院で診断済みだが、オンライン診療を中心に継続したい

ご予約は24時間Webから可能です。